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1026 大崎=釧路市阿寒町(北海道)“帰りがけの駄賃”に延々バスに乗って立ち寄った阿寒湖で蘇る “まりもと写楽”の記憶 [岬めぐり]

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 切手収集という趣味は、たいていが一度は手をつけるけれども、だいたいは長続きしない。小学生の頃から、家に来るわずかな手紙に貼ってある切手をはがして、それをノートに貼り直していたが、高校生になる頃やっと記念切手の発売日に郵便局の窓口で買うことを覚えた。だが、それから何年かして到来したブームとバブルで郵便局には行列ができるようになり、その狂騒に嫌気がして、ついにはやめてしまった。
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 “阿寒湖のまりも”のことを、最初に身近に意識したのは、それを図柄にした切手が出たからであった。当時は、ただ値上がりを楽しみに買うのではなく、その題材についてのうんちくを楽しむ余裕がある、“王者の趣味”といわれた雰囲気をまだ残していた。それが、1956(昭和31)年のことであった。
 天然記念物である阿寒湖のまりもを描いた切手は、額面55円の普通切手だった。当時の封書の郵便料金は10円だったから、額面も高額なうえに半端だが、これは記憶では小包用の切手だったと思う。まだ、クロネコも飛脚も走らない時代は、郵便小包みが物を送る唯一の手段だった。
 この切手が印象に残るのは、わが国では初となる本格グラビア多色印刷によるものだったからだ。そのためにドイツから輸入したのは、これも記憶では確かハイデルベルクの印刷機だったはずだ。
 単色で地味だった切手に、新しい展開をもたらした記念すべき普通切手がこのまりも切手だったのだ。カラーがまだ一般的でない頃、その深い緑の朦朧体のような丸い球の美しさは、神秘的な阿寒湖の湖底を想像させるに充分といえた。
 まりものことは知ったものの、それから今日まで実に半世紀以上もの間、阿寒湖には行く機会がなかった。その周辺に寄り添うように集まっている、屈斜路湖や摩周湖には行っているのに…。
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 その理由を、地図を眺めながら考えてみると、屈斜路湖や摩周湖は、中標津空港に近いし、その中間には川湯温泉などがあるうえ、道路から通りすがりに立ち寄ることができる。屈斜路湖は美幌峠から下りの眺めもあるし、歌で有名になった摩周湖には、道路脇からすぐ上がることができる展望台が2か所もある。
 これに対して阿寒湖は、第一に標高が高いので通りすがりというわけにはいかない。ガソリン代もかかるので、安いツアーでは観光バスも気軽に立ち寄ることができない。おまけに他の地域とは、隔絶されたような環境にあるのでルートも限られるうえ、温泉旅館などに占領されている湖畔は、道路からは離れていて展望にも恵まれない。まりもの歌もあったけど、まったく流行らなかった。こりゃ、やっぱりアカンわ。
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 阿寒湖には、大崎という岬表示もあるので、この機会に釧路から飛行機に乗る前に往復しておく必要がある。
 釧路駅前のホテルに泊まって、早朝の阿寒バスに乗るが、これが釧路から阿寒湖まで約75キロとかなり長距離の路線バスで、同じ釧路市内とは思えないほど運賃も相応にかかる。窓口で帰りは空港で降りたいというと、係のおじさんは電卓を叩いて計算してくれて、それならフリーパスポートのほうが安いと教えてくれた。阿寒バスと網走バスが共同で運行している「弟子屈えこバスパスポート」は、4日有効で4,000円。釧路と網走の間の主要路線のバスを、自由に乗り降りできる。釧路駅前から阿寒湖、阿寒湖から釧路空港までの合計バス運賃が4,000円を超えるとなると、このパスのコストパフォーマンスはかなり高い。問題は、このパスをうまく使いこなせる客がどのくらいあるかだが、でんでんむしのような使い方もあるわけだ。
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 釧路駅前から空港までは20キロと少しなので、さてそこから阿寒湖までが長い。空港までちらほらいた乗客も降りてしまい、がらんとしたバスは、ひたすら牧場の中を突っ切り、山の中へ入って行き、延々と走ってやっと湖畔のバスセンターに到着する。そこから湖が見えるところまで、旅館と土産物屋の並ぶなかを降りて行く。
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 阿寒湖は、想像していたよりずっと小さな湖のように見える。実際、屈斜路湖よりはるかに小さく、摩周湖よりも少し小さい湖面は、標高1,370メートルの雄阿寒岳の噴火による溶岩流でできたらしい裾野が、湖の東半分を埋めているのだ。そして、その西に張り出した溶岩流の先端が、大崎というわけである。
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 その雰囲気と大崎の岬らしいところは、終点の温泉街まで行かないで、手前のバス停で降りて東の出っ張りのほうへ行ったほうがよかったようだ。
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 湖畔を西へ移動しながら、大崎の姿を求めるが、ちょうど小島の陰にぎりぎりというところまでしか行けない。そこで、湖畔を占領している旅館の露天風呂に遮られてしまうのだ。
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 まりもは、そこらで見るというわけにもいかない。ちょうどその大崎の付近の水深45メートルの湖底にも、たくさんかどうかは不明だが、それはあるらしい。
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 切手収集の趣味を広めようと、1947(昭和22)年に初めて発行された切手趣味週間切手は、北斎の冨嶽三十六景「山下白雨」で、これは額面1円の通常切手を5枚シートにしたものだった。それに続くのが、1948年の「師宣の見返り美人」、1949年の「広重の月と雁」、それからちょっと間があって1955(昭和30)年の「歌麿のビードロを吹く女」ときて、まりも切手がでた年の秋に発行された切手趣味週間の切手は、「東洲斎写楽の市川蝦蔵」であった。
 それらの切手は、いずれもその後の切手ブームの主役となったが、蔦屋重三郎に見出され役者の大首絵という大胆な図柄で世に出た写楽を知ったのも、この切手を通じてだった。
 三代目海老蔵を襲名したものの、“自分は雑魚えびの蝦”だと謙遜して名乗った蝦蔵が演じているのは、『恋女房染分手綱』という演目の「竹村定之進」である。そういう世界を初めて知ったのも、この切手のおかげだったし、この頃、歌舞伎の定式幕をデザインした特殊な封筒にこの切手を貼り、それに因んだ日付印を押すエンタイアの収集も始めていた。
 小さな切手は、その向こうに広がっている大きな世界を覗く窓だった。
 たとえ、まりものように朦朧とした輪郭線であってもいい。今、でんでんむしの岬めぐりは、海岸線の岬(ごくたまに湖の岬も)を辿り、わが日本という国の輪郭をなぞりながら、そのかたちを確かめてみたいと思いつつなおも歩いて行く。
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▼国土地理院「地理院地図」
43.45231, 144.112591
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dendenmushi.gif北海道地方(2013/09/07訪問)

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タグ:北海道
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